大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)804号 判決

しかし原判決の挙示引用に係る標目の各証拠を綜合すれば原判示の事実は優にこれを認めるに足り事実誤認の疑もなく審理不尽の違法もない。すなわち刑法上窃盗罪の成立に必要な不法領得の意思とは権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいうのであつて、永久的にその物の経済的利益を保持する意思であることを必要としないのであるから被告人が仮令所論の如く原判示自転車を千葉の預り所に預け放置するつもりであつたとしてもいやしくも原判示岩瀬に無断で勝手にこれを持ち出し、しかももとの場所にかえしておく意図の全然認められない以上同人の所持を奪い一時的にも該自転車の権利者を排除し終局的に自ら該自転車に対する完全な支配を取得して所有者と同様の実を挙げる意思すなわち右にいわゆる不法領得の意思がなかつたというわけにはいかない。これを要するに原判決の摘示事実及びこれが証拠によつて被告人に本件窃盗罪の成立に必要な不法領得の意思のあつたことが認められるのであるから原判決には所論のような事実誤認、審理不尽の違法はない。それゆえ論旨は理由がない。

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